成年後見人等の候補者について

成年後見等開始の審判申立の際,申立書に候補者(成年後見人等に選任したい方)を記載します。
候補者として申立書に記載したとしても,家庭裁判所はそれに縛られることなく独自の判断により候補者を決定しますので,必ずしも希望通りになるとは限りません。
誰が成年後見人等に選任されるかについては,次のような情報を参考に,実際に申立を行ってみるしかないのが現状です。

年齢,性別,親族関係,資格等による制限はあるか

成年後見人等に就任できるかどうか,資格制限などはありません。
ただし,次の方々は,民法上の欠格事由として,成年後見人等に就任することはできないとされています。
・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人
・破産者
・被後見人・被保佐人・被補助人に対して訴訟をし,又はした者並びにその配偶者及び直系血族
・行方の知れない者

法律上の利害関係がある場合はどうか

例えば,亡父の遺産分割を行うために相続人である子が,同じく相続人である母の成年後見開始の審判申立において自分を後見人候補者とした場合,家庭裁判所は選任を避ける傾向にあります。
子が遺産を多く取得した場合,母の取得する遺産が減少する点で法律上の利害関係があることが明らかだからです。
このような場合,一時的に司法書士などを後見人に選任し,遺産分割が終了した後に,後見人を子に交代する方法がとられる場合もあります。
子による母の療養看護の状況など,事情を総合的に判断することになりますので,司法書士などが選任されたままになるケースもあります。

候補者が遠隔地に居住している場合はどうか

例えば,唯一の子が県外在住である場合に,子を成年後見人等の候補者とした場合などが考えられます。
これについては,遠隔地に居住していることのみをもって選任されないとされることはなく,時々選任されているケースが見られます。
ただし,本人が口座を有する地方銀行の支店やATMが候補者の居住地に存在しない場合の財産管理の方法や,病院や施設のカンファレンスに参加できるかどうかなど,後見事務を遂行するにあたっての課題が残ると思われます。

収入が少ない,借金があるなどの事情がある場合はどうか

親族を成年後見人等に選任する場合,故意であるかどうかに関わらず,残念ながら本人の財産を不正に支出してしまうケースが後を絶ちません。
家庭裁判所はその点をとても警戒していますので,経済状態が悪い方を候補者にした場合,マイナスの事情になることは避けられないと考えられます。

本人の預貯金が1200万円を超える場合

今のところ,本人の財産(現金・預貯金のみ,不動産や有価証券等は除く)が1200万円を超える場合に,親族を成年後見人等に選任する場合は,成年後見制度支援信託又は成年後見制度支援預金を利用するか,司法書士などを監督人に選任することを条件とする運用がなされています。場合によっては司法書士などの専門職のみを選任するケースもあります。
成年後見制度支援信託とは,成年後見の類型の場合に限り,特別な信託口座を開設して預貯金を集約することで,家庭裁判所の許可なく親族後見人が財産を支出できないようにする契約のことです。
成年後見制度支援預金も同様で,家庭裁判所の許可がなければ預金を引き出すことができない銀行口座です。
司法書士などが監督人に選任されると,家庭裁判所に加えて監督人のチェックを受ける必要が生じますが,後見事務などについて監督人の助言や支援を受けられるというメリットもあります。ただし,監督人に対する報酬を支払う必要が生じるというデメリットもあります。
財産が高額になるケースは,申立前によくご相談いただくことをお薦めします。